教育係は巫女探偵【小説『境内ではお静かに 縁結び神社の事件帖』より】

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途中までのあらすじ

とある理由で大学を中退した壮馬は、神社の娘と結婚して婿入りし宮司になった兄の仲介で神社で働くことになります。

そこでは壮馬は北海道からやって来て巫女として働く雫に、神職としての仕事を教わることになりました。

雫は参拝客とからの悩みや神社絡みのトラブルを解決した実績があり、壮馬の教育係をしながらも様々な謎やトラブルに取り組むので、壮馬も解決に協力していくことになります。

作品紹介

元々は光文社から2018年にソフトカバーで出版、2020年に同出版社から文庫版が発売。

ミステリーですが神社そのものについても触れていて無人神社の存在や神社がどうやって収入を得ているかについても言及していました。

巻末を見ると複数の神社や巫女の本が並び、宮司や神職へのお礼の言葉が書いてあるので作者が丁寧に取材したことが伝わります。

ちなみに本作はソフトカバーと文庫のどちらも、巫女装束で人差し指を口に近づけた雫のイラストが表紙で続編でも同じポーズをとっていました。

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巫女探偵

この小説は壮馬視点で進み謎やトラブルを雫が解決していくので、雫がホームズ、壮馬がワトソンの立ち位置で話が進みます。この関係は劇中でも例えられていました。

雫は高校生ですがある目的のため北海道から1人、横浜にある遠縁の神社に来て巫女を務めています。

それを壮馬が知るのは終盤であるため、壮馬にとって中盤までの雫は可愛いけれど理解できないところのある二面性の激しい女の子でした。

雫は参拝客には笑顔で接しますが普段は不愛想です。このギャップに壮馬は戸惑いましたがそれにもやがて慣れていく、というより慣れざる負えない。

雫は優れた観察眼と推理力で謎やトラブルを解決していきますが、自分の身に危険が迫るような状況でも解決するために突き進むからです。

不慣れな神社で戸惑いながら働く壮馬に対しても、神職に嫌気がさしているからそんな態度ではないかと思うほど他人の心理には鈍く、そのことを気にしているからこそ多少の危険を気にせず推理を続ける雫。

他人の気持ちを理解することにこだわるのは理由があり、それは壮馬自身も後々知ることになります。そのとき壮馬は自分の心情を曲げてまで雫を助けようとしました。

ただ雫には引っ掛かることが1つだけあります。

それは雫がある犯罪を本人も反省しているからと見逃したことで、そのことを問い詰める壮馬に対し雫は『和の精神』という概念を持ち出しました。

雫は災いをもたらす存在を排除しようとせず、融和していくことのすばらしさを壮馬に話しますが、劇中でも語られるように神社は穢れを嫌います。

この作品は第一帖、第二帖と区切られているので、引きずられながら読み進めずに済みましたが、穢れを嫌うことと雫の言う『和の精神』が読んでいて結びつきませんでした。

鳥羽

参拝客には愛想良く、壮馬のような神社で働く人物には不愛想な雫ですが、特別に接する相手がいます。

それが鳥羽という人物で、鳥羽も雫に対しては特別な思い入れがあるような態度をとるので、壮馬はそれが気になるのですが雫に聞くことはできません。

鳥羽がある出来事をきっかけに雫と連絡先を交換したことを、後になって知った壮馬はそれも気になります。

この鳥羽も複雑な背景のある人物で立ち振る舞いだけなら誠実に見えますが、やってきたことはそうでもありません。一部の出来事だけを切り取れば完全に悪人ですが、善人とも悪人とも言い切れない人物として描かれています。

そんな鳥羽の過去は壮馬とも少しだけ重なり、それが雫の抱えることにも繋がっていきました。

2人の関係

本作は壮馬と雫の関係の描写が主軸ではないので、2人の仲が分かりやすく進展するようなことは起きません。

壮馬は雫の外見や危険を顧みない行動をとるため、序盤から雫を気に掛ける描写があり、それを壮馬自身が好意と意識したりしなかったりします。

壮馬の雫への思いは基本的に空回りが多く、弱っているようだから力になりたいと思ってもそれがただの勘違いだったことも。

雫の方は壮馬を特別に意識した言動はとっていませんが、話が進むにつれて壮馬を頼るいうになります。

雫自身は壮馬について好きとも嫌いとも言っていないのですが、少なくとも序盤よりはお互いに信用するようになりました。

ラブコメ要素の強いミステリーとして読めなくもないのですが雫側の描写が薄く、雫が抱えることも終盤になって解決するので、ラブコメの本番はこれからという感じの終わり方をします。

なら物足りないかというとそうなことはなく、日常を舞台にした人の死なないミステリーとして面白さは十分。

話が二転三転する回や神社の行事について細かく描写するなど、帖ごとに特徴が出ます。

キャラクターは少人数で謎解きも雫が1人で済ませますが、マンネリ感を感じることなく読むことができました。

壮馬は大学を中退したばかりで雫は高校生とメインの2人が若者なので、ミステリーに不慣れでもラノベの延長のような感覚で読めると思います。

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