コネも実力のうち【小説『横浜ヴァイオリン工房のホームズ』より】

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途中までのあらすじ

とある事情から住んでいるアパートを出なければならなくなった広大は、友人のツテでヴァイオリン修理工房の一室を紹介されます。

その工房の主人・響子は家賃を格安にする条件として広大の人生についてすべて話すことを条件にしました。

最初は不快に思った広大ですが、響子が自分の行動や心理をピタリと当てたことから、胸に抱えた悩みを相談する形で響子に自分のことを話すことにします。

レーベルについて

この本は『メディアワークス文庫』から2018年に出版されています。

このレーベルは『電撃文庫』と同じ旧アスキー・メディアワークス(現KADOKAWA)のもので、『電撃文庫』より上の年代がターゲット。

表紙はアニメやマンガ風のイラストが使われていますが、ラノベと違って挿絵はなくラノベコーナーにもいて置いてありません。

この小説もラノベ並みに細かい料理描写がありますが、本屋では一般向けの文庫に置かれています。

『横浜ヴァイオリン工房のホームズ』は全2巻で、2巻の表紙はこんな感じです。

推理しない響子

タイトルからも分かるように、この小説は『シャーロック・ホームズ』を意識し、小説の地の文は広大の視点で進むところも、広大がワトソンで響子がホームズの立場であることを表しています。

それじゃあホームズのように響子が推理を披露するのかというとそうはなりません。

響子が推理するのは最初のエピソードで広大の心理や行動を読みあて、あるヴァイオリニストが不調であることを指摘した時くらいです。

この小説は大きく3つにエピソードに分けられるのですが、このうちの2つは広大の目の前で推理するような場面はなく、響子はどこかから手に入れた資料を元に掴んだ事実を広大に披露するだけした。

この事実を掴む手段がコネです。

響子は病院関係者にツテがあるようで、3つのエピソードのうち2つでそれを使いました。

上記のヴァイオリニストがある持病を抱えていたことを掴んだのもカルテを手に入れたからです。3つ目のエピソードは人探しですが、その人物が入院していることやその病院も同じツテで掴みました。

広大の目の前で金とコネを駆使して探し物や尋ね人を引き寄せる。というようなことはしません。

一方広大は真相を掴むことができませんが、人探しで不動産会社に叔父がいる友人を頼るなど自分のできる範囲で聞き込みをします。

響子にはそういった描写がないので、広大の方がちゃんと推理をしているように見えました。

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引っ掛かる点

この1巻では響子は3人から依頼を受け、1人は広大で残りの2人はそれぞれヴァイオリンとある人物の捜索を依頼します。

(中略) あらゆる音を聴き分ける力とホームズばりの推理力で、なぜか楽器修理と共に持ち込まれた事件を解決する名探偵。そんな響子さんの下宿人兼助手の僕もまた、彼女の「耳」に救われた一人だった……。音×謎解き。新しい名探偵がおくる芸術ミステリー登場!

公式サイトより

サイトにはこのように紹介されていますが、楽器修理と共に持ち込まれた事件も1つもなく、広大は挨拶もかねてお菓子を用意しますが、残りの2人はどちらも手ぶらなんですよね。

この小説は全体的にかみ合わないというか引っ掛かる点が所々ありました。

まず広大ですが、兄が昔付き合っていた女性のことをまだ気にかけているか知ろうとします。

そこまではいいのですがその方法が、兄の携帯を本人がいないうちにロックを解除しようとするもので、番号がその女性の生年月日であることを知った広大は嬉しくなりました。

その兄はすでに別の女性と付き合い、その人物とも結婚を考えているので複数の意味でモヤるエピソードです。

また3つ目のエピソードで広大はある女性の横浜観光に付き合うのですが、そこで本牧について『レインボーブリッジが眺められる』と地の分で書いています。

レインボーブリッジは東京なので横浜ベイブリッジの間違いでしょうね。

広大が初めてヴァイオリン工房に行く際、品川から本牧まで行く間を細かく描写していたのでこの部分が余計に気になりました。

キャラクターについて

ここまで否定的なことを書きましたが、キャラクターについては悪い印象はあまりありません。

広大は個性の薄い主人公ですがその分余計なフィルターなしで話を読めますし、響子も偏屈な美人として特徴が出ていました。

響子は広大の手料理に胃袋を掴まれたのか広大相手にはチョロく、他の女性が広大と仲良くしているとあからさまに不機嫌になるので面白いのですが、1つ1つの出来事では首を傾げたくなる部分も出てきます。

探偵モノというより広大が様々な人物と関わり、その結果響子が不貞腐れたり機嫌がよくなったりする物語。として読むのがちょうどいいですね。

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