3分でわかる小説『昭和少女探偵團』

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魅力的な2人を中心に動くライトなミステリーですが、読んでいて引っ掛かる部分があるのがもったいない1冊でした。

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あらすじ

  • 女学校に通う茜とその級友の元に怪文書が届く。
  • 茜の親友に疑惑の目が向けられるも、同じクラスの才女・潮が自分にもアリバイがないと主張をする。
  • 機械いじりが得意な環や潮と協力して怪文書の謎を解決した茜は、2人との繋がりが無くなるのが寂しく、思いつきで探偵団を作る話を持ちかけ探偵団は結成する。

昭和6年

タイトルにあるようにこの作品は昭和6年を舞台で、地の文は茜の視点で進みつつ時折他のキャラクターに視点が変わる形式です。

茜が通う女学校は正式には高等女学校といい、明治時代にできた女子を対象にした中等教育の学校で、教育基本法成立後は高校や現在の女子高に変わりました。この他にも恐慌や戦争といった昭和初期をネタにした要素はいくつも出てきます。

本作は全4話で3話と4話は前後編なのですが、この2つは現代の精神病院にあたる脳病院が重要なポジションで登場しました。

扱いの悪い茜

昭和少女探偵團は物語の大半が茜の視点で進むので、茜が主人公であるのですが茜自身はあまりスポットが当たりません。

人気作家の母と売れない詩人の父の間に生まれ、女学校に通えるほどは裕福ですが母親には仕事があり、父親は遊び歩いて家にいないことが多いので一家の家事を担っています。父親はそのことについて女中を雇うことを提案しますが、母の反対により却下されました。

母親は「女中なんてしていたら女はいつまでも日陰者のままだ」という考えで反対したのですが、子供に家事を任せていることについては気にしていません。そのため本人には悪意のないネグレクトのように見えました。

また母親は自分の書いた小説を『金にしかならない』と自虐的に例え、父の方が作家として優れていると考えていますが、この茜の父親は身勝手な人物です。

よく遊び歩くのですがモテるため何人もの女性と仲良くなり、そのことを浮気と自分では捉えつつも、もし妻が自分のように浮気したら隠し持った拳銃で殺して自分も死ぬという考えの持ち主でした。

このように茜は大きなトラブルはないものの、かなり特殊な家庭で育っています。これが物語に影響を与え、茜の出番に繋がるかというとそうはなりません。

上記の父親の独白には何ページも尺を割いていますが、あってもなくても変わらないレベルで今後の展開には影響のないものでした。

茜が潮に探偵団を持ちかけたのは接点がなくなるのは嫌だったからで、その後も探偵団として事件を解決するのですが、茜は巻き込まれる側だったり潮や環をサポートする側です。

茜は他人の心情を理解することに優れた描写がありますが、そのことで事件を解決に導いたりはしません。

縫い物が得意で雑誌を見て服を作ることができ、脳病院が出るエピソードでは潜入しても怪しまれないように看護服も作りましたが、機械いじりが得意な環の方が活躍するので主人公でありながら存在感は薄いです。

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強くなる違和感

3~4話では華族の紫と紫に仕える灰田というキャラクターが新たに現れるのですが、灰田には頭に脳みそではなく綿菓子が詰まっているとバカにされ見返す機会はありません。

戦争や恐慌についても潮や紫はそれぞれ公表できないものを抱えていますが、それらは主題ではないため茜の能天気さを強調することになります。

また4話ではそれまでの茜とは全然違う、戦争に対して批判的な地の文がいきなり挟まれるので驚きや意外性より読みづらさを感じました。

このちぐはぐさは3話から強くなります。紫は長男が医者で次男が軍人の家と結婚することが決まっていて次男と許嫁でしたが、長男に変更することを相手方から提案されました。

そのことでプライドが傷ついた紫は、どんな事情があったのか知るため灰田に調べさせ、長男が務める能病院に次男の手がかりがあると考え、少女探偵団の3人への協力を提案。

終盤、紫は次男に対して恋をしていたことが描かれますが、脳病院への潜入する経緯やこの終盤の流れには強引さを感じます。

可愛らしい茜と凛々しい潮が魅力に描かれた表紙にふさわしく、劇中のキャラクターは生き生きとしていましたが、上記の違和感や誰が喋っているのか分からない場面があることも含め、読んでいてもったいないと思う一冊でした。

続編はこちら。

シリーズとしては全2作で、『謎が解けたら、ごきげんよう』というタイトルの続編もあります。

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