2021年に週刊少年ジャンプで連載が始まり、2024年秋アニメでもある『アオのハコ』。
主人公の猪股大喜を中心に、鹿野千夏と蝶野雛との三角関係が進む本作ですが、9巻では雛が大喜にふられるためこの関係に変化が生じます。
ふられるまでやその後の雛の言動があまりにも負けヒロインとして輝いていたのでこの前後の雛について解説しました。
フラれるまでの雛
雛は連載初期から登場し大喜をからかうポジションだったが、それは大喜への好意をごまかすカモフラージュでしかない。
そのことを自覚してしまうものの、大喜と千夏が親の事情で同棲していることにショックを受けることになる。
同棲については大喜の説明でとりあえず納得したものの、千夏に対しては「優しくて可愛くてスポーツも出来るなんて なんかすごい性癖あって欲しいな」と思うなど好意的に捉えてはいない。
そんな雛は大喜が千夏のことを好きなことを知ったうえで告白し、返事は保留することを求めた。
これは大喜がいずれ自分ことを好きになればそれでいいという雛の希望や願望による提案であり、友人である現在の関係の現状維持を狙ったものだったが2人の関係は8巻で大きく変わることになる。
文化祭でのキス未遂
8巻では文化祭が起き、大喜と雛のクラスは白雪姫の演劇を行うことに。雛は白雪姫役で大喜は裏方だったものの、王子役のクラスメイトが負傷し大喜が代役で出ることになる。
この劇では事故で大喜と雛が事故が起き、舞台上でキスをしたように見えてしまうという出来事が起きてしまう。そのことでちょっとした噂になるものの、雛は大喜をからかうネタの1つとして扱っていた。
そんな雛だったが、9巻では雛の心情にスポットが当たる回があり以下のことが明らかになる。
- 雛が何か言って大喜が赤くなったりすると喜んでいたこと
- 文化祭では王子役が大喜だったらと密かに妄想していたこと
- 本当に大喜が王子役になり緊張でどうにかなりそうだったこと
- 白雪姫の劇を一生忘れないと思ったこと
- 2人だけで劇の練習をしたときに本当にキスしてもいいと思っていたこと
- キス未遂で周囲に色々言われたときに本当に付き合えるんじゃないかと期待していたこと
- 友人関係であることを利用して大喜に接していたこと
丁寧に雛の心情が描写され雛が文化祭での劇をめちゃくちゃ意識していたことも描写されるが、これらはすべて雛が大喜にふられるまでの前振りだった。
ついにふられる
秋合宿のキャンプファイヤー中に周囲から離れて2人きりになる大喜と雛。自分に告白した雛のことを意識している自覚のある大喜は雛とは付き合えないことをはっきりと宣言する。
雛はすぐには受け入れられないものの大喜は変わらず雛は1人飛び出した。
努力すれば結果はついてきたし努力した自分を好きになれた
だけどこと恋愛においてなんでこんなに醜くなっちゃうんだろう
この独白が出る場面では顔をぐしゃぐしゃにして泣く雛が描かれるのだけれど、この姿が本当にいい。
『美しい』と思わず言いたくなるくらい絵になっている。雛は可愛そうな姿がよく似合う。
ふられた後も
ふられたからといって雛の出番がなくならない。
9巻では自分が傷つかないためにふった相手を悪く言う心情が理解できるだけで泣いてしまうエピソードがあり、合宿後は大喜と距離をとり、体育館にいづらさを感じ体育館を爆破したいと心の中でつぶやくほど思いつめる。
11巻では友人として話せるようになるものの、大喜との関係が進みそうなフラグはなく、大喜と話した後で寂しそうな顔を大喜に見られないようにするだけ。こういういじらしさや切なさも雛を輝かせる。
この雛の失恋は作品全体としては主なエピソードの1つでしかない。大喜にはバトミントン、千夏にはバスケがあり、雛も新体操があるため、3人とも恋愛にばかり意識を向けるわけにはいかないからだ。
それを証明するように10巻や11巻では雛の出番が増えることはなく、雛の心情にスポットが当たることもない。
3人とも部活に打ち込んでばかりではないし、恋愛にだけ夢中になることもない。
大喜は雛を意識して調子を落としたりしないし、千夏は大喜と雛に何があったのかを知らないまま、大喜の存在が千夏の中で大きくなっていることを自覚する。
この甘酸っぱい残酷さもアオのハコの魅力だ。
公式PV
6巻発記念で雛にスポットを当てたPVが作られている。
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