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リスペクトとアレンジがすごい『新仮面ライダーSPIRITS』の『旧1号&旧2号篇』

『新仮面ライダーSPIRITS』の『旧1号&旧2号篇』についての解説記事です。

現在シン・仮面ライダーが上映されているため、このタイミングで特撮の仮面ライダーやシン・仮面ライダーと見比べてみるのも面白いですよ。

あらすじ

バダンの侵攻に対し日本全国に散らばった10人の仮面ライダーの戦いは、一層熾烈を極める! ――が、ここでしばし幕間、“始まりの男”の物語をお見せしよう。悪の秘密結社ショッカーとたった独りで戦っていた本郷猛(ほんごう・たけし)=仮面ライダー。彼に接触してきたのはショッカーを追うカメラマン一文字隼人(いちもんじ・はやと)……2人の男は如何に出会い、如何に「仮面ライダー」となったのか!? ファン待望『旧1号&旧2号篇』今ついに!!

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本作について

本作は『仮面ライダーSPIRITS』の続編に当たり、ストーリーも『仮面ライダーSPIRITS』から繋がっています。

作者は村枝賢一先生で『仮面ライダーSPIRITS』は『マガジンZ』で連載していたものの、『マガジンZ』の休刊により『月刊少年マガジン』に掲載誌が変わりました。

その際にタイトルも『新仮面ライダーSPIRITS』に変更し、2023年3月現在でも連載中です。

そのためコミックスも『新仮面ライダーSPIRITS』は1巻から始まっていますが、話は『仮面ライダーSPIRITS』からそのまま続いています。

2作かけて仮面ライダー1号から仮面ライダーZXまでの10人の仮面ライダーと、BADANとの戦いを描いているのですが、『月刊少年マガジン』に移籍してからはあらすじのように本郷猛の物語が始まりました。

後に仮面ライダー2号となる一文字隼人との出会いなどを1巻か2巻の半分くらいのページをかけて描き、その後に『仮面ライダーSPIRITS』の続きが始まります。

『旧1号&旧2号篇』では、ショッカーに改造された本郷猛と、ショッカーを追うカメラマン一文字隼人の出会いと、2人がダブルライダーになるまでの経緯が描かれていました。

本郷の孤独と隼人の存在

この『旧1号&旧2号篇』は第1話のタイトルが孤独とあるように、改造人間になった本郷の孤独が強調されています。

改造人間としてショッカーの改造人間と戦うものの、自分と同じような改造人間は味方側にはおらず、おやっさん(立花藤兵衛)、緑川ルリ子、滝和也のような味方はいるものの、3人とも人間であるため本郷の心の奥へは入れません。

むしろショッカーの魔の手が伸びないように、本郷の方から距離をとっているところもあり、本郷自身もいつまで続くか分からない戦いでメンタルが弱っている描写もありました。

戦闘シーンも迫力があり見ごたえはあるものの、仮面ライダーは当然のように傷つくため、『新仮面ライダーSPIRITS』全編を通して痛々しさを感じる描写も少なくありません。

『旧1号&旧2号篇』では派手な戦闘シーンはないものの、メンタルが前述の状態なので本郷からは戦闘と日常のどちらからも痛々しさがにじみ出ています。

そんな本郷の前に自分と同じように改造された一文字隼人が現れました。

改造ベッド(手術台)で拘束された隼人。

その姿に本郷はショックを受けつつも隼人を助けるのですが、それは善意だけではなく、仲間を求めていたことにもありました。

劇中ではそのことについて「俺は孤独に破れ仲間を求めてしまった」「俺はお前を助けなければよかった」とはっきり描写しています。

この描写は原作に当たる特撮の仮面ライダーにはなく、本作独自のアレンジであり隼人に関する描写は本作独自の要素が多いです。

仮面ライダーでは本郷役の藤岡弘、さんが怪我で出演できなくなったため、急遽登場することになった隼人ですが、本作ではもっと早い段階からショッカーを追うカメラマンとして登場します。

本郷が改造人間であることも登場時には把握済みで、蝙蝠男との戦闘も見ており、ルリ子の父である緑川博士がショッカーによって殺害されていることも知っていました。

特撮では接点のなかったルリ子とも取材対象としてやり取りがあるなど、原作にはなかった描写がいくつも含まれ、本作独自の魅力を醸し出す要因となっています。

本郷に助けられたときも体は改造されたものの、脳改造が済んでいない状態で助けられたため、力の加減ができず振り払おうとしただけでショッカーの戦闘員を殺害してしまう描写もありました。

本郷は仮面ライダーの姿でも戦闘員を気絶させるだけで済ませる描写があるので、この描写は力の加減ができる(人間の振りができる)本郷と、改造人間になったばかりでそれができない隼人という対比でもあります。

そんな自分の現状に戸惑い怯える隼人と、隼人に自分の首を掴ませ、本郷の力になってほしいと頼むルリ子は『旧1号&旧2号篇』の盛り上がりどころの1つです。

原作リスペクト

『旧1号&旧2号篇』は仮面ライダーの1~13話をベースに独自の要素を加えた内容ですが、この原作部分へのこだわりがすごいです。

まず本作1話では子供とのやり取りから始まるのですが、これは第4話「人喰いサラセニアン」の最後のやり取りを再現しており、服装まで再現していました。

『旧1号&旧2号篇』は改造人間になる前の隼人が本郷やショッカーを追うのが本筋であるため、前半は本郷の活躍する場面はあっさりとしていますが、それでも13話までに登場した怪人たちを所々で出してきます。

この怪人たちは13話で再生怪人して登場するのですが、その中でも注目すべきはさそり男です。

仮面ライダー第3話「怪人さそり男」に登場したさそり男は本郷の親友、早瀬五郎が改造人間になった姿です。

早瀬は本郷の親友であるものの本郷に嫉妬心を抱えており、本郷を超えるために自ら改造人間になりました。

そんなさそり男について、本郷の心情は掘り下げられてはいませんでしたが、『旧1号&旧2号篇』には独自のアレンジがあります。

さそり男に早瀬としての意識があるのか問う本郷と、人間としての記憶を否定し、「この毒と鋏が俺の全てだ!」と言い切るさそり男のやり取りが加えられていました。

ショッカーライダー

また『旧1号&旧2号篇』の終盤、仮面ライダーの1号と2号になった本郷と隼人が、隼人と同じ姿に変身する集団と戦う場面があるのですが、これはショッカーライダーが元ネタです。

仮面ライダーではショッカーライダーは仮面ライダーの設計図を基に作られており、ブーツとグローブは黄色でマフラーもそれぞれ色が違いました。

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『旧1号&旧2号篇』ではショッカーライダーという名前はなく、改造人間になった隼人の同型機として登場し、最初は人の姿で登場するものの仮面ライダー2号と同じ変身ポーズをとり同型機としての姿を現します。

そのため変身後の姿は隼人を含めて全員同じになってしまい、演出の都合上仕方ないとはいえ誰が誰だか分からなくなるコマがあるという難点も生まれてしまいました。

この人間時の姿は仮面ライダー撮影当時、仮面ライダーを演じていた人物たちをモデルにしており、『仮面ライダーSPIRITS』と同作者の『仮面ライダーを作った男たち』と比較することで分かりやすく見て取れます。

アンチショッカー同盟

他にも『旧1号&旧2号篇』ではショッカーの被害者として小暮と石上というキャラクターが登場しますが、この2人は仮面ライダーに登場したアンチショッカー同盟が元ネタ。

アンチショッカー同盟はショッカーとその後継組織であるゲルショッカーの被害者が作った同盟で、仮面ライダーの終盤に登場します。

子供を人質にした怪人に対して、交換条件であるテープの受け渡しを拒否し、滝にエゴイスト呼ばわりされ石上以外は全員殺害されるなどいい扱いではありませんでした。

生き残った石上もアンチショッカー同盟の方針に逆らい、独自の判断でテープをおやっさんに渡しますがその後の描写はありません。

『旧1号&旧2号篇』ではショッカーの被害者として登場して隼人と接触し、ショッカーが潜伏すると思われる教会に向かいました。

ですがそれは罠で小暮と石上以外は再生怪人に殺害され、助けに来た隼人によって教会から逃げることはできたものの、隼人はショッカーに捕まり改造されるきっかけになります。

この教会も仮面ライダー第11話「吸血怪人ゲバコンドル」が元ネタで、この第11話ではゲバコンドルが若い女性の生き血を吸うためのアジトとして教会を使っていました。

小暮と石上は隼人を助けるため、ルリ子、おやっさん、滝とともにショッカーの基地に潜入し、隼人は本郷が助けて基地から生還します。

改造された隼人の姿を見てショックを受けた石上が、償いのためにショッカーと戦うことを誓うエピソードがあるのですが、特に活躍する機会はないまま『旧1号&旧2号篇』は終わりました。

そのため扱いがいまいちよくないのは原作と同じであると表現できるかもしれません。

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