2020年にコミックフラッパーで連載が始まりアニメ化も発表された本作。
お嬢様学校を舞台に百合と格ゲーを混ぜ合わせた闇鍋のようなこの漫画について1巻を中心に2巻まで取り上げていきます。
ゲーミングお嬢様と同時期に始まった本作ですが、これは偶然であると作者の対談で触れています。
ファイルーズあいさんと長江里加さんが出演するこのPVでどんな話か大体分かります。
1巻
- 黒美女子学院というお嬢様学校に入学した深月綾は、『白百合さま』と呼ばれる夜絵美緒が空き教室でひっそり格ゲーをしているところを見かける。
- 翌日美緒は綾のことをとにかく見つめるので、昨日の教室でその理由を聞くと返事の代わりに美緒は綾が格ゲーマーであることを指摘し対戦をするよう言ってくる。
- 綾は断るつもりでしたが美緒の言動に飲まれ、バレたら処分を受けるリスクのある校内での対戦を始めた。
以上があらすじで本作は綾の視点で話が進み、綾は格ゲー経験者であるものの、格ゲーを引退して自分を変えるためにお嬢様学校に入学。
引退したのはある出来事が理由でそのことを綾は引きずっていましたが、美緒との出会いによって格ゲーに復帰し、あまり引きずらなくなっていきました。1巻ではその過程を描いています。
一方美緒はシンプルに『格ゲーしたい』『対戦したい』という思考に染まっていました。
そのことは劇中でも綾の台詞や格ゲーの操作で触れられていて、綾からは小学生だと心の中で思われていたり。
そんな二人を中心に動いていくのが本作ですが、全体的には『百合』漫画というより『格ゲーあるある』漫画に百合要素を入れたものという表現が適切な印象を受けました。
内容に触れますが綾は美緒に対して嫉妬などの様々な感情を抱きます。
これは自分が格ゲーをやめ、慣れないお嬢様学校での生活を過ごしているのに対し、美緒は処分を恐れず学校にアケコンとノートパソコンを持ち込み、こっそり格ゲーに明け暮れる生活。
そんな美緒の姿は綾には輝いて見えるのですが、『白百合さま』と呼ばれるほど美しい外見の持ち主が生き生きと好きなもの(格ゲー)に打ち込む姿は、格ゲーを辞めることにした綾にとっては自分の考えを否定されたようなものでした。
1巻で綾と美緒は2回対戦します。
1度目は美緒に押し切られるかたちで、2度目は格ゲーを否定した自分を肯定し、格ゲーを楽しむ美緒を否定するため対戦。
美緒に感情を揺さぶられる綾の姿は百合作品といえますが、肝心の美緒は対戦したいだけなので2人の感情のやり取りは格ゲーに限られます。
美緒の顔が近づいたときに思わずキス顔をしたりする場面もありますが、PVからも分かるように甘い展開にはなりません。美緒を否定したい綾と、ただ勝ちたい美緒が格ゲーを通してぶつかり合いました。
綾は美緒を意識していますが美緒は綾より綾との対戦に意識が向いているため、2人の相手への意識は同じようで違います。その姿に百合を感じ取れるかで百合作品としての評価が決まるでしょう。
それでは格ゲーパートはというと対戦中の駆け引き描写は薄いです。
スポーツものの漫画にありがちな試合中の描写はほぼなく、その分対戦後に立ち回りを振り返る描写にページを割いていました。
この対戦中のキャラクター描写は薄く、対戦後に振り返るかたちでキャラクターを描くのはこの漫画の特徴です。ここも合う合わないが分かれるかもしれません。
2巻
綾を軸に美緒との関係の構築と、格ゲーへの向き合い方を描いた1巻に対し、2巻はキャラクター間の関係に変化はありません。
美緒がコミュ障ぼっちであることが判明し、綾を友達として捉えるようになりますが2人の関係は格ゲーが主軸です。
綾と美緒の関係も百合というよりライバルという表現が適切なままで、綾も美緒の外見や言動に変に照れたり動揺したりしなくなりました。
代わりに一ノ瀬珠樹と犬井夕が新たに登場し、4人で対戦するようになるまでが描写されます。
珠樹と夕の協力で寮内でも安全に格ゲーができるようになったため、『学校にばれると処分を受ける状況で対戦する』というシチュエーションはなくなりました。
そのため対戦での立ち回りについてあれこれ考えたり発言するページが増えています。
百合漫画としても格ゲーあるある漫画としても1巻に比べてインパクトが弱くなっていますが、『耐え難い精神的苦痛、国家による人権侵害、この国は狂っている』という単語が並ぶ美緒が黒美女子学院に入ることになったきっかけにはインパクトがあり。
ただこれは格ゲーとは直接関係がないため、人によって評価が分かれそうなエピソードですが、次巻で大きく話が動きそうなエピソードも出てくるため、設定やキャラクター周りを固めることを優先した内容になっているのだと思われます。
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