※以前自分のブログに書いた記事を移したものです。
映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の公開が始まり、スタッフへのインタビューも様々なメディアで載っています。
その中に『小説で描かれた「地球環境問題」「テロリズムの歪み」は現代社会の写し鏡』という文章がありました。
宇宙世紀を舞台にしたガンダムには、環境問題について触れた台詞は確かにありますが、劇中の描写となると少し違ってくるので、そのことについてナレーションや劇中の演説を取り上げながら触れていきます。
閃光のハサウェイのネタバレも含まれるので、ネタバレを避けたい方は最後まで読まないことをオススメします。
劇中での言及
人類が、増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀。
地球の周りには巨大な『スペースコロニー』が数百基浮かび、人々はその円筒の内壁を人工の大地とした。
その人類の第二の故郷で、人々は子を生み、育て、そして死んでいった。
宇宙世紀0079。地球から最も遠い宇宙都市『サイド3』はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。
この1ヶ月あまりの戦いで、ジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死にいたらしめた。
人々は自らの行為に恐怖した。
これが『機動戦士ガンダム』第1話のナレーションです。文章にあるように触れられているのは人口問題であり環境問題ではありません。
増えすぎた人口を宇宙に移民させることについてはガルマ国葬時のギレンの演説でも触れていました。
我々は地球を追われ、宇宙移民者にさせられた。そして、一握りのエリートが宇宙にまで膨れ上がった地球連邦を支配して50余年。宇宙に住む我々が自由を要求して、何度踏みにじられたか。
環境問題に演説で触れるようになったのはZガンダムからです。
人は長い間、この地球と言う揺り籠の中で戯れてきた。しかし! 時は既に人類を地球から巣立たせる時が来たのだ! その後に至って何故人類同士が戦い、地球を汚染しなければならないのだ!
地球を自然の揺り籠の中に戻し、人間は宇宙で自立しなければ、地球は水の惑星では無くなるのだ! このダカールさえ砂漠に飲み込まれようとしている! それほどに地球は疲れ切っている!
ダカールの連邦議会での演説でクワトロは自分がシャアであることを明かし、その上で上記の演説をしました。
ガンダムにおいて数少ない地球の環境問題に触れたエピソードですが、逆襲のシャアでは環境問題について触れられなくなります。
しかも、地球連邦政府が難民に対して行った施策はここまでで、入れ物さえ造ればよしとして彼等は地球に引きこもり、我々に地球を解放することはしなかったのである!
(中略)ここに至って私は人類が今後、絶対に戦争を繰り返さないようにすべきだと確信したのである! それがアクシズを地球に落とす作戦の真の目的である!
これによって地球圏の戦争の源である地球に居続ける人々を粛清する!
シャアはアクシズを地球に落とし、地球を人の住めない星にする計画を演説で語っていますが、環境問題については特に触れていません。
このように環境問題は宇宙世紀において、話題として取り上げられてもそれほど重要なテーマではありませんでした。
Zガンダムの演説も内容の大半が敵対するティターンズという組織への非難であり、環境問題はその根拠の1つに過ぎなかったのですが、閃光のハサウェイでは踏み込んだ内容になっています。
閃光のハサウェイでの環境問題
※これ以降閃光のハサウェイのネタバレがあるのでご注意ください。
閃光のハサウェイでは電波ジャックによるテロの告知と、そのような行いを間違いと認識しつつも、行わなければならない理由について触れるエピソードがあります。
内容はある法案を反対するものですが、同時に地球の環境についても触れていました。
これが、理想の戦いでないのは知っているのですが、宇宙移民法にあるとおり、すべての人びとが宇宙に出なければ、地球は本当に浄化されることはありません。
(中略)もう一度、思い出して下さい。旧世紀の最後の1世紀だけで急増した人類が、地球そのものにも瀕死の重傷をも負わせたのです。
しかも、スペース・コロニー移民がはじまって1世紀もたっていない現在、地球の海は、まだまだ化学薬品が残留しているのです。雨にも、まだ化学物質が混入したままなのです。
まして、植物と小さい生物たちの命は、十分に復活していません……それは何を意味するか?
このように閃光のハサウェイはそれまでのガンダムに比べて、環境問題について踏み込んでいますが、劇中の描写となると変わってきます。
これまで挙げたガンダムでは環境が悪化し、○○だったものが××になったというエピソードはほとんどありません。そのため環境問題について触れても話題として弱く、ゲームでは省かれることが多いです。
実際に上記のマフティーの演説ですが、環境問題について触れる台詞はGジェネではカットされていました。
それでは最近の作品だとどうかというと、オリジンのアニメ版公式サイトでははっきりと環境問題について書いています。
旧暦(西暦)の末期、人類は増えすぎた人口による食糧需給の逼迫や、国境をまたいだ深刻な越境環境汚染などによって、国家間の紛争が頻発し、文明の崩壊すら招きかねない、深刻な事態に直面していた。(中略)
これはアニメ『機動戦士ガンダム THE ORGIN』の公式サイトにあった文章ですが、人口問題にだけ触れていたガンダム1話のナレーションに対し、食料や環境についても触れるようになりました。
身も蓋もない表現をしてしまえば後付けですが、こうやって後付けされていくのが宇宙世紀なので、今後宇宙世紀を舞台にしたガンダムは、環境問題について触れる機会が増えるだろうと予想しています。
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