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独自色が強くてライトなミステリー【『メタブックはイメージです』より】

物語の世界を役者やセットを用意し、現実で再現するエンターテインメント『メタブック』。

そんなメタブックを提供する会社で働く主人公が、メタブックにまつわる謎に取り組むライトなミステリーの2作目です。

あらすじ

自分が小説の主人公になれる!? 物語世界をリアルに体験できるエンターテインメント「メタブック」を提供するディリュージョン社。新入社員の森永美月はある日、自殺した作者が最後にのこしたと噂される『呪われたメタブック』の存在を知る。その物語は読んだ者に不幸な出来事をもたらすという。誰もが関わりたがらない中、怖い物知らずの美月は呪いの正体を暴こうと奔走する!

Amazonより

本作は続編です

この小説ははやみねかおるさんの作品で、講談社タイガから2018年に発売されました。

ディリュージョン社の提供でお送りします』の続編に当たり、前作の主人公である美月や相棒役の立ち位置である手塚和志はそのまま登場します。

メタフィクションとミステリーの要素を組み合わせた前作に対し、今作はミステリー色の強い内容でメタフィクションの要素は弱め。

加えて舞台から事件の真相に至るまで非現実的な要素がなかった前作に対し、今作はこれから死ぬ人物に死の前兆が見えるキャラクターが登場します。

そのため前作とは違ったミステリーになっていました。

呪いに挑むストーリー

本作独自の要素であるメタブックは、顧客が望む物語の世界を役者やセットを使って再現するエンターテインメントのことを指します。

美月と手塚はこのメタブックを提供するディリュージョン社の社員であり、メタブックを提供する側なのですが、美月が知らない呪われたメタブックの存在が本作の軸になります。

この呪いとは特定のメタブックの準備中に何故か不可解なトラブルが起きるというもので、その中には超常現象とは思えないものもありました。

このメタブックの存在を知る北野純次は、超常現象を取り上げる番組を制作しており、「呪いというものがあるなら起きてほしい」と顧客として依頼します。

手塚を含めたディリュージョン社側は呪いのことを知らない美月を除いて難色を示しますが、呪いが起きなくてもいいならと顧客として仕事を請けました。

そしてメタブックの舞台となる地方に集まり、メタブックの準備を始めるのですが、メタブックの妨害を狙った不可解な出来事が続けて起きるのです。

また北野がメタブックの出演者として連れてきた粟井永恋は、マネージャーのついていないアイドルの卵ですがそれだけではなく、前述の人の死の前兆が見えるキャラクターでもあります。

そのことを知る北野に利用されるかたちでメタブックに参加するのですが、当の粟井は死の前兆を感じ取っておらず、呪いというには直接的な妨害に美月や手塚は対策をとりながらもメタブックの準備を始めます。

野生児美月

前作に比べ美月のガサツで配慮のない言動は大人しめになり、代わりに活躍する機会が増えました。

今回は舞台が地方の村だった場所に撮影のようなセットを用意したものであり、周囲は自然に囲まれています。

このような環境のため美月の身体能力や知識が役立つ場面がいくつもあり、前作よりも読みやすい内容となっていました。

もったいないなと思ったところ

本作は英恋の他に美月の同期である九瑠璃も登場し、どちらも手塚のことを好意的に見ているところが描写されますが、本作にラブコメ要素はありません。

そのためラブコメ要素を求めていないのなら読みやすい内容ではあるのですが、個人的には読んでいて持ったにないなと思いました。

まとめ

とはいえ本格的ではないライトなミステリーとしてはオチまで綺麗についており、複雑なトリックや動機とは無縁なので、軽く読める作品が読みたいときにはちょうどいい小説でした。

作者のはやみねかおるさんは『怪盗クイーン』や『都会のトム&ソーヤ』などのシリーズを手掛けています。

どちらも児童向けの文庫であり、これらを読んだことや聞いたことがある方であれば、同じ作者が本作のような話を書いているギャップも楽しめるのではないでしょうか。


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