複数の死体を繋ぎ合わせて『フランケンシュタインの怪物(クリーチャー)』を作る世界を舞台に、不謹慎な要素を詰め込みつつも明るくテンポのよいストーリーが進む『RAIDEN-18』について解説します。
あらすじ
マッドな博士と怪物のアナーキーコメディ!
死体改造愛好家のマッドなタチバナ博士によって
いろんな死体(相撲取りなど)を
つなぎ合わせて造り出された怪物(クリーチャー)、
その名は「雷電18号」!!
謎多きタチバナ博士と心優しくツッコミ上手な
雷電18号が巻き起こす不謹慎いっぱいなコメディ!
本作について
本作は鋼の錬金術師や銀の匙の作者である荒川弘さんの読み切り作品で、2021年にコミックスになりました。
読み切りを掲載したのは月刊サンデーGXで掲載時期は以下のようになっており、15年という長い期間です。
- 2005年8月号
- 2006年1月号
- 2011年1月号
- 2021年2月号
それぞれChapter1~4と振られた4つのエピソードの他に、描き下ろしのEpilogueを加えたのがコミックスで特設サイトも作られており、1話の試し読みもできます。
不謹慎で不条理な世界
それではこれからは内容に触れていきます。
Chapter1は雷鳴が響く中、優れた死体を組み合わせて作られた『ライデン18号』が、博士のタチバナによって最強の『創造物(クリーチャー)』として目を覚ますところから始まります。
ネットオークションで購入した死体を改造し、新たな命を創り出すことが当たり前のように行われている世界が舞台であり、ライデンはその無茶苦茶さにツッコミを入れるものの、タチバナに自爆装置を体に仕込まれているため言うことを聞くしかありません。
そんな2人のやり取りをテンポよく描写しながらも、ライデンはクリーチャー選手権に参加することになります。
これは全国各地の死体改造マニアが集まりクリーチャーを戦わせるもので、クリーチャーにはスポンサーがついており、その中には医者や寺もあり。
優勝者には墓から盗んだと思われるとれたての死体をプレゼントという不謹慎っぷりです。
この不謹慎さはChapter2以降も続いており、歴史上の人物や出来事を持ち出すなど危ない話を渡るようなエピソードが次々と出てくるものの、話自体はギャグ多めのアクションでした。
Chapter2ではタチバナの過去を匂わせる描写がありつつも、どこまでが真実か分からないものになっており、Chapter3では偽物を退治するため中国に向かいます。
『RAIDEN-18』と検索すると中国で批判されたエピソードを見かけるでしょうが、その原因はこのChapter3。
読み切り掲載当時、中国で鋼の錬金術師の海賊版が出回っていたことに怒った作者が、絶対に中国で海賊版が作られない内容にしたという逸話があります。
それではChapter4はというと、大英博物館の地下にさらわれたライデンを助けるためにタチバナがイギリスへ行くことになります。
全編を通して鋼の錬金術師のギャグが多めの戦闘シーンのノリが終始続くような内容で、B級映画感が強いマンガでした。
不謹慎なりに倫理観のある世界
これまで書いてきた通り本作は不謹慎な世界の物語ですが、不謹慎なりに倫理観はあり、代表的なのものが殺人の禁止です。
死体を手に入れるために殺人を犯すことは禁忌であり、劇中でそれをやったキャラクターは外道の扱いを受けました。
またChapter1では死体愛好家がたくさん選手権のギャラリーとして出る反面、死体を繋ぎ合わせて戦わせることに反対するキャラクターも登場するなど、ただ不謹慎なだけの世界にはなっていません。
誰でも楽しめるほどではありませんが、嫌悪感を感じにい構成になっています。
違和感のない絵柄
本作はChapter1が2005年掲載で、描き下ろしEpilogue付きのコミックスが発売したのは2021年です。
そのため15年以上開いているのですが絵柄に違和感がありません。
古臭さも目新しさもない、漫画家としての荒川弘さんの安定した絵柄っぷりが伝わる作品で、そういう意味でもお勧めできるマンガです。
まとめ
- 『RAIDEN-18』は鋼の錬金術師や銀の匙の作者である荒川弘さんの読み切り漫画
- 死体をネットオークションで買い、組み合わせてクリーチャーを作る不謹慎な世界が舞台
- テンポ良くテンション高めに不謹慎な世界を突き進む内容
死体と政治ネタを扱うため人を選ぶ要素はありますが、荒川弘さんの漫画家としての絵柄の安定感とこういうマンガも描けるという幅広さを感じられました。
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