『恥知らずのパープルヘイズ』の作者である上遠野浩平さんが原作を手掛け、4部の舞台・杜王町を舞台に3部のキャラクターが登場する本作のネタバレありの解説記事です。
クレイジー・Dの悪霊的失恋とは?
ホル・ホースが杜王町に向かうことになったきっかけは?
花京院涼子とは?
あらすじ
ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・Dの悪霊的失恋 1
消えた鸚鵡の捜索を任されたホル・ホースは、ボインゴを引き連れS市杜王町へ。街中で「歩道が広いではないか…」というかつてのDIOの言葉が耳に入り振り返ると、暴走した車がホル・ホースに迫る! 何かの力により難を逃れたが、そこにはリーゼント&学ラン姿の男が…!?
本作について
『ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・Dの悪霊的失恋 』は2021年の12月から連載が始まり、コミックスは全3巻で完結済み。
原作は荒木飛呂彦さんの『ジョジョの奇妙な冒険』で、本作はそのスピンオフに当たります。
『クレイジーDの悪霊的失恋』の原作者は『恥知らずのパープルヘイズ』や『ブギーポップは笑わない』を手掛けた上遠野浩平さん、作画はウルトラジャンプで『ノー・ガンズ・ライフ』を連載していたカラスマタスクさん。
上遠野浩平さんによる小説版もあり、こちらの表紙は荒木飛呂彦さんによるものとなっています。
↓のリンク先で1話の試し読みが可能。
ジョジョの奇妙な冒険 クレイジー・Dの悪霊的失恋|#1|ヤンジャン!|集英社公式・ジャンプ系青年マンガ誌アプリ (ynjn.jp)
時系列としては4部『ダイヤモンドは砕けない』の前日譚で3部の10年後、杜王町にやって来たホル・ホースが高校入学前の東方仗助と出会うストーリーです。
ホル・ホースが杜王町に向かうまで
あらすじにもあるように、ホル・ホースが鸚鵡(オウム)の捜索を依頼されたことが物語の始まり。
オウムはDIOの配下でスタンド使いでもあるハヤブサ・ペットショップとも接点があり、はっきりと言及されてはいませんが同じ人物の調教を受けたとされる描写があります。
ホル・ホースはこのオウムやペットショップの調教をしたと思われる人物の母である老婆の依頼を受け、オウムを息子同然だと口にする老婆の熱意に負けてオウムを捜索することになりました。
この老婆ですがSPW財団に危険な存在だと思われたら処分されるかもしれないと考え、ホル・ホースに依頼したことも描写されています。
オウムを探すことにしたホル・ホースは昔の仲間に会いに行き、ひと悶着がありながらもトト神のスタンド使いであるボインゴと再会し、トト神の予言で出た杜王町へ2人で向かうことに。
またこの再会ではボインゴの他にマライアも登場し、ケニーGと結婚していることが明かされます。
杜王町に着いたホル・ホースは離れ離れになったボインゴを捜索中に東方仗助と出会うことに……。
堀り下げられるホル・ホース
3部での経験から常に複数の腕時計をつけるようになったものの、基本的には3部の頃から変わっていないものの、DIOへの恐怖心はなくなっていないことが描かれるホル・ホース。
本作の舞台は杜王町ですが、回想というかたちで本作オリジナルの3部時代のエピソードも描かれます。
DIOと3部の主人公である空条承太郎たちが戦っていることを知り、DIOが勝つと判断して逃げようとしたこと。
DIOに血を吸われた女性たちの中からまだ生きている人物を救助したこと。
こういったエピソードが登場するため、3部の後日譚という見方もできます。
花京院涼子
本作オリジナルのキャラクターで、花京院典明の従妹であり本作のカギになる存在。
花京院に似た髪の色や前髪をしており、社会的にはカイロで不審死という扱いの花京院の死を引きずっています。
涼子にはスタンド能力はなく、墓参りのためにやって来た杜王町でトト神のマンガを拾い、予言で仗助たちが花京院の死の真実に近づくきっかけになることを知ることに。
涼子が花京院にこだわるのには理由がありました。
10年前に花京院の家族と一緒にエジプト旅行をしている
花京院がDIOと出会ったのは迷子になった涼子を探している最中である
DIOが花京院に肉の芽を植え付けるところを目撃している
これらが明らかになると同時に涼子が花京院の死について知りたがるのは、花京院の死に自分は関係ないと安心したいからだということも明らかになります。
そんな彼女が自分と向き合うことも本作の重要なパートでした。
このように本作は花京院の身内は花京院の死をどう受け止めたのかという原作では触れなかった部分にスポットを当てていいますが、涼子の言動から「SPW財団は何をやっていたのだろう」という疑問もわく展開にもなっています。
花京院の両親がSPW財団に口止めを依頼した可能性はありますが、本作ではそういった描写はありません。
仗助との出会い
あらすじにあるように暴走した車に襲われるホル・ホースの前で、クレイジー・ダイヤモンドを使い車を止めた仗助。
短いやりとりを通じてホル・ホースのことを気に入った仗助は、ホル・ホースの『杜王町で離ればなれになったボインゴを見つける』という目的に協力し、花京院涼子とも出会うことになります。
時系列としては4部の前なので、4部の他のキャラクターは出てきませんがクレイジー・ダイヤモンドの能力は健在。
不慣れな場所で殺傷を避けたいホル・ホースが、一般人も巻き添えにする敵スタンド相手に上手く戦えないこととは対照的に、戦闘以外に負傷した一般人の治療も行うため活躍する場面がいくつもあります。
ペットサウンズとは?
本作オリジナルのスタンド。
ホル・ホースが探していたオウムのスタンドで、オウムの鳴き声を聞いた相手に過去の出来事を追体験させます。
この能力で攻撃した相手に過去の出来事の人物と同じ行動を取らせることや、他人に幻覚を見せることもでき、存在しない人物がまるで本当にいるかのように錯覚させることも可能。
精神攻撃としては強力ですが、あくまで過去の追体験なので直接攻撃する能力ではありません。
また体の一部を食べた相手のいうことを聞く習性があり、劇中では仮頼谷一樹の耳の一部を食べ、仮頼谷の指示に従ってスタンド攻撃を仕掛けました。
仮頼谷一樹とは?
本作オリジナルのキャラクター。交番勤務の警官で仗助の祖父である東方良平の部下として登場します。
言動は丁寧で穏やかなキャラクターに見えますが、他人を見下しており頂点を目指す野望の持ち主。自分の野望の邪魔になると考え、ペットサウンズを使い仗助やホル・ホースを追いつめました。
仮頼谷の祖父は、頂点を目指す者は最終的に勝てばよかろうの気持ちでいればいいという考えの持ち主で、仮頼谷の思想に影響を与えています。
この考えは祖父が1930年代に、諜報員としてスイスのサンモリッツにいたときの経験から生まれたと描かれており、このサンモリッツは2部終盤の舞台。
2部主人公のジョセフ・ジョースターがワムウやカーズと戦った時期と場所です。
またこの祖父も吸血鬼ではないかと思わせる描写もありますが、匂わせる程度で本当に吸血鬼になったのかもサンモリッツで何があったのかも描写はありません。
一方ボインゴは?
予言に従いトト神のマンガを手放したボインゴは、良平が勤務する交番で保護されていました。
その後ペットサウンズの攻撃を受けながらも助かり、仗助の影響を受けて良平にお礼を伝えようとしたところ、マンガが良平の死を予言してしまいます。
ボインゴはそのことを良平には伝えられないまま日本を離れました。
仮頼谷とボインゴの描写から分かるように、本作はシリーズの枠を超えた描写や設定がいくつもあり、スピンオフというかたちの公式二次創作なので当然といえば当然ですが、二次創作らしさが強く出ています。
そのため人を選ぶところはあります。
まとめ
・ジョジョ初のスピンオフコミックで4部の前日譚に当たる
・トト神の予言に導かれてホル・ホースとボインゴは杜王町を訪れ、そこで東方仗助と出会う
・花京院典明の従妹・花京院涼子が登場し、トト神のマンガを拾うことで花京院の死の真相に近づいていく
荒木飛呂彦さんが描いておらず、3部と4部のキャラクターが関わる内容なので、人を選びそうな部分はありますが話は面白く、綺麗に3巻で終わるため気軽に手に取ることができるマンガです。
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