2023年秋アニメ『ウマ娘 プリティーダービー Season 3』。
本作の7~8話についての解説記事です。ネタバレを含み辛口が多いのでご注意ください。
7話と8話は3期の悪い部分が出た内容でした。
7話
有マ記念のファン投票に選ばれたキタサンとダイヤ。ふたりは幼い頃に見たトウカイテイオーの有マ記念に感動し、いつかこんな大きなレースで一緒に走ろうと約束していた。お互い強い思いを胸に、運命のレースのゲートが開く。
ウマ娘 プリティーダービー Season 3
キタサンとダイヤの意識の差
有マ記念での直接対決が決まったキタサンブラックとサトノダイヤモンド。
いい勝負をしたいというキタサン。サトノ家の一員として勝利し凱旋門賞を視野に入れるダイヤ。
2人の意識の差がそのまま出たかのように、有マ記念はダイヤの勝利で終わります。
レース中もダイヤに一瞬意識が向きくキタサンと、ひたすらレースに集中するダイヤと2人の差が描かれました。
キタサンは7話の最初にあったジャパンカップでは分かりやすく喜んだものの、7話ではレース後に笑顔で振舞いつつ、誰にも見られていないところで悔しさだけではない戸惑いなどの様々な感情を見せます。
唐突なダイヤ
有マ記念のレース直前、「いい勝負をしよう」と話しかけるキタサンに対し、ダイヤはキタサンを呼び捨てにしたうえで自分が勝つと宣言します。
3期のダイヤはサトノ家の一員としての描写が多く、キタサンと自分を比べることもなく、キタサンを友人としてどう思うかの7話になってから描かれるようになりました。
それなのにキタサンに自分との意識の差を話すこともなく、レース前に呼び捨てするので唐突さがありました。
この唐突さは今回だけではなく3期全体にいえることで、その原因は登場するキャラクターの多さが原因と考えられます。
引かれていないキャラクター数
3期の特徴として、2期のキャラクターがほぼ全員登場していることが挙げられます。
2期では1期で登場したキャラクターの大半を登場させない、または少ししか登場しませんが、3期ではこの引き算が行われていないため、キタサンたちの掘り下げが少なくなっています。
そのためキタサンが所属するスピカすらチームとしてはほとんど機能しておらず、トレーニングの場面も1人で走り他のキャラクターが棒立ちで見ているだけの演出が多いため、間延びした印象を与えます。
一緒に走るキャラクターが少ない
3期では2期以上にキャラクターが登場するもの、レースを走るキャラクターが減っています。
2期ではトウカイテイオーとメジロマックイーンの2人を中心に、カノープスの4人、ライスシャワー、メジロパーマー、ダイタクヘリオス、ウイニングチケット、ビワハヤヒデなどが登場し、テイオーとマックイーンとは競わなかったミホノブルボンもいました。
ですが3期はキタサンとダイヤを除くと、サトノクラウン、シュヴァルグラン、ドゥラメンテ、サウンズオブアース、ゴールドシップの5人のみ。
そのためレース中やレース後の描写やキャラクター感の関係性の描写が2期に比べ薄くなっています。
その分モブのキャラクターたちにスポットを当てればよさそうなものですが、そういう演出はありませんでした。
短いレース間隔
2期との違いとしてはスタートからゴールまで描いたレース数の差も挙げることができます。
2期ではスタートからゴールまで描いたレースは1話、2話、3話、5話、8話、12話の計5つ。
一方の3期は1話、2話、3話、5話、6話、7話と、7話の時点で計6つ。7話の時点で2期以上にレース描写があります。
このレース数の差も、1人1人の掘り下げや関係性の描写の薄さに繋がっています。
またレースについてですがジャパンカップが『JAPAN CUP』ではなく、『JUPAN CUP』と表記されており、こういった面でも残念な内容でした。
8話
新年を迎え、ダイヤと初詣に出かけたキタサン。ダイヤの願いが、凱旋門賞に勝利して日本のウマ娘界に貢献したいというものと知る。そんなダイヤに、いつかのドゥラメンテの姿を重ね見るキタサン。勝利の先にあるものを見ているふたりと、目標を持てないでいる自分との差に落ち込むキタサンだったが……
ウマ娘 プリティーダービー Season 3
再起するキタサン
有マ記念後の年明け、初詣に向かうキタサンとダイヤですが、凱旋門を見据えるダイヤに対しキタサンはうなだれたまま。
キタサンはレースに勝つという目標があっても、勝利したうえでどうしたいかという部分が抜け落ちていることが明らかになり、テイオーや商店街の住人の声を受けて再起します。
またドゥラメンテと初めてまともに会話した回でもあり、この会話時もキタサンが話をする前につま先立ちをする演出があるなど、日常生活の描写も丁寧でした。
目標があやふやなキタサン
キタサンのメンタルが回復する回でしたが、キタサンがレースを走る動機には曖昧な部分があります。
過去の回想から父への憧れ→テイオーへの憧れがトレセン学園に入学する切っ掛けになったことは分かるのですが、ちと親とテイオーに加え、商店街の人たちの応援も重要なものとして描かれていたため何が(誰が)軸なのかがはっきりしません。
『ウマ娘 プリティーダービー ROAD TO THE TOP』と比較すると分かりやすいのですが、RTTTでは3人が走る理由として『自分のため』『妹のため』『みんなのため』とそれぞれ別のものがありました。
この3つで見るとキタサンが走る理由は自分のためなのかみんなのためなのかはっきりしないところがあります。
またRTTTでも商店街の面々に励まされる場面がありますが、RTTTでは1話以降レースを勝てていないのに応援してくれるという流れでしたが、本作では既にG1を3つとっているため応援してくれるため、エピソードとしては弱くなります。
このエピソードとしての弱さは、キタサンが自分には才能がないという場面も当てはまります。
G1を勝てないシュヴァルグランやG1での勝利経験がないナイスネイチャなどがレギュラーとして登場するため、「キタサンで才能がないのなら他のキャラクターはどうなる?」となってしまいます。
加えて自分からハードトレーニングを申し出てG1勝利という結果を出しているため、才能がないという言葉も弱くなります。
またキタサンは3話の最後、ゴールドシップからルービックキューブを受け取り、「ゴルシさんを超えてみせます!」と宣言するのですが、8話のキタサンはこのことに一切触れませんでした。
やさぐれシュヴァル
このようにキタサン関連の描写に疑問が残る8話でしたが、シュヴァルグランの方が短いながらもG1で勝利できない苛立ちが表現されていました。
ボールを雑に投げるシュヴァルに対し、ヒールを履いたままガチなフォームで投げるヴィルシーナもインパクトがあります。
その後のシュヴァルとのやり取りも、避けられるのが分かっていても構ってしまうヴィルシーナが魅力的でした。
まとめ
ウマ3期の悪い部分が出た7話と8話で、キタサンの目標は何が軸なのが曖昧。
シュヴァルの焦りは短い時間でも表現されていた。
ヴィルシーナはつい構ってしまうお姉ちゃん感とガチの投球フォームのギャップが魅力。
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