※辛口あります
2020年の11月にGA文庫から出版された『週4で部屋に遊びにくる小悪魔ガールはくびったけ!』についての解説記事です。
辛口で書いている部分もあることをあらかじめご承知ください。
あらすじ
転校してきた無気力な高校生の比良坂聖也。その彼にやけにかまってくる女の子がいる。黒江美沙――マンションのお隣りさんの彼女は中学生ながらスタイルもよく、大人びていて、聖也をからかうのが得意。それも体を使って。
週4で部屋に遊びにくる小悪魔ガールはくびったけ! (GA文庫)
彼女は聖也のことを気に入り、週4のペースで部屋に遊びにくるように――。プロをも目指したバスケをあきらめ、無気力な『余生』を過ごす聖也は、戸惑いつつも彼女と日常を過ごしはじめる。
小悪魔ヒロインによるおしかけ系ラブコメディー、開幕です。
作者は九曜さん、イラストは小林ちさとさんが担当しました。
魅力的なヒロイン
本作の特徴としてまず挙げられるのはヒロインである美沙の存在です。
この作品は美沙が聖也をからかうエピソードが大半を占めるのですが、それらのエピソードに不快感はなく、描写されており、中学生とは思えないスタイルのよさやその言動に聖也が振り回される様子は、男性主人公が受け身のタイプのラブコメとして王道の描写でした。
イラストもイメージ通りというレベルを超え、表紙でも分かるようにイラストの影響で蠱惑的かつ魅力的な存在に引き上げられています。
美沙は自撮りを送ったり、目の前でスカートをたくし上げようとしたり、時には下着の話題まで振る美沙ですが、そんな彼女にも悩みがあることが判明します。
それは母親の再婚のことで、相手の男性と上手くいくか不安だった美沙は母親とも距離をとるようになり、その結果としてタイトルのように週4で遊びにいくようになったことが終盤明らかに。
この母親の再婚ですが、母親自身は美沙に父親が必要と考えていたことがきっかけであり、聖也の存在が美沙の中で大きいことを知った母親は再婚の必要を感じなくなりました。
聖也と美沙は付き合ってはいませんが、ある意味美沙の母親公認の仲になったともいえる終わり方をします。
好き嫌いの出る主人公
本作で扱われるテーマの1つにバスケットボールがあります。
聖也は元々バスケで雑誌の取材を受けるほどの選手でしたが、怪我で部活を引退して転校後は無気力な生活を過ごしています。
この選手時代のことを聖也は今でも引きずっており、バスケを辞めたものの自分はバスケができなくなったわけではなく、怪我をする前のような繊細なプレーができなくなっただけであることを劇中何度も地の文で主張します。
同じチームだった相手と再会し、相手が謝罪したがっていても受け付けず、被害者であることを利用して上から目線で突き放します。
これは聖也が雑誌で取り上げられる選手で周囲の何人かに嫉妬されており、怪我で以前のようにプレーできなくなったときに周囲から色々と言われたことが原因なのですが、肝心のこの部分が聖也の独白でしか描写されません。
そのためは聖也が独りよがりなキャラクターに見えてしまいます。
転向後はバスケ経験者であることを隠しており、そのことがバレて新しい友人との関係にもヒビが入るのですが、その後の描写がほとんどないままなのもこれを強めました。
最終的には聖也はバスケットボールを手に取り、もう1度バスケを始めそうな描写もあるのですが、このとき周囲にいるのは美沙だけなのでは聖也と美沙の関係以外は中途半端に終わります。
このように本作は聖也も美沙も自分の環境と現状に向き合う話です。
そのためラブコメといえるような場面は少なく、美沙は何度も押し掛けて下着姿になるなど過激なアプローチも行いますが、聖也には子供扱いされ相手にされません。
そのため面白さとは別に『おしかけ系ラブコメディー』という紹介文に疑問が出る内容でした。
Xに投稿されたイラスト
イラストを担当した方にとっては思い入れのあるキャラクターのようで、小悪魔ちゃんという名前でXにイラストが投稿されており、その一部をまとめて埋め込みました。
まとめ
- 後輩で積極的なヒロインが好きならおすすめ
- ラブコメ色が薄いことや主人公の言動は人を選びそう
- イラストレーターがヒロインのイラストをSNSに投稿している
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